「愛」とは何でしょう。さらに「怖れを手ばなすこと」と続くと、よけい「何?」という気持ちになります。本を手にとり、目次をパラパラとめくったとき、どうやら「ゆるし」がテーマの一つのようだと思いました。私は、「ゆるすこと」があまり得意ではありません。表面だって争うことはあまりしませんが、ふと気がつくと、何かを思い出して怒っているときがよくあります。この本と出合ったときも、怒っていることがありました。本の帯をみると、29か国で、400万部のベストセラーということ。「これは、読んでおいたほうがいいだろう」と思いました。
はじめに読んだときは、正直、よくわかりませんでした。特に最初のあたりは哲学的です。「ゆるすと自分の心身が楽になる」と、いうようなことが書かれてあると感じましたが「そう簡単にゆるせないから、苦しいのです」と、私は、本に対峙します。でも、怒りでたぎっている心の中に、細いながらも澄んだ川のような、清らかなものが流れこんできていることは感じていました。それは、訳者まえがきの「どうか無理をすることなく、(ゆるす)ベストなタイミングを待ってください」という文章と、著者が書いた「2004年版によせて」の中の「ゆるしとは、ひどい行いを大目にみたり、認めたりすることではありません。『私はもう、自分を痛めつけることはしない』と決心することにほかありません」という部分です。最初は微々たる流れでしたが、「この本が、これだけ多くの人に読まれているのはなぜだろう」と思いながら何回か読んでいくうちに、共感できるところが広がり、その流れはしっかりとしたものになっていきました。
本の中には、「ゆるし」を行った人々が、人生をよりよく生きていく姿などが感動的に、記されています。特に「過去は過ぎ去ったことであり、私に触れることはできない」というところが心に響きました。私が怒っていることは、確かに過去のことでした。それを思い出して、いつまでも怒っているのは、自分が怒りを選択しているに過ぎません。その時間を、もっと建設的なことに使えばいいのは明白です。また、「まずほかの人から愛を与えてもらわなければ、自分の中に愛を感じることはできない」という考え方から「人に愛を与えれば、自分が何者であるのかを自分に教えることになる」という考え方への転換は、今後生きていくうえで、大きな財産になるのではないかと思いました。
「何を考えるかは、自分の選択であり責任である」ということを、優しくいたわりをもって書かれている本です。繰り返し読むうちに、著者の伝えたいこと、温かい愛情が、行間から浮かび上がってくるように感じました。
■愛とは、怖れを手ばなすこと ■ジェラルド・G・ジャンポルスキー ■サンマーク文庫 ■本体543円+税