タイトルだけでは、内容が想像できない本があります。
この本が、まさにそれ。
実はワタクシ、ひゃくはち→108→煩悩の数→除夜の鐘→お寺→幽霊(!)
という流れで、ホラーだとばかり思い込んでおりました。
結果は大ハズレ! 正解は、こうでした。
ひゃくはち→108→ボールの縫い目の数→高校野球→目指せ!甲子園
そう、『ひゃくはち』は、強豪校で甲子園を目指す、
高校球児たちの熱い青春物語だったのです。
しかも、主人公は特待生として入学したエリート選手ではなく、
一般入試で入学した《補欠組》! 帯にはこうあります。
ひゃくはち――それはボールの縫い目 そして煩悩の数
補欠だからこそゆずれない夢がある
物語は、大手新聞社に勤める「僕」こと青野雅人が、
恋人に秘密を打ち明けられるところからはじまります。
彼女の告白は衝撃的でした。
実は、二人は高校時代にすでに一度出会っていて、
そのとき自分は、雅人にひどい目に遭わされたのだと言うのです。
雅人はその経緯を思い出すため、高校時代に思いを馳せます。
――甲子園出場を目指していた、京浜高校・野球部時代へと。
当時高校2年生で、野球部の寮に入っていた雅人は、
「T」こと監督の山田正造に厳しく、激しく指導されながら、
同じく一般入試で入学した親友・ノブとともに
“ベンチ入り”を目指す《補欠》の日々を送っていました。
……と書くと、いかにもストイックなスポ根物のようですが、
描かれているのはきれいごとばかりではありません。
タバコを吸ったり、合コンしたり、酒を飲んだり……。
普通の(あるいはそれ以上の)高校生としての一面も描かれています。
――それは、まさに“煩悩”まみれの青春の日々。
ただ、ひとつだけ雅人が普通の高校生と違っていたのは、
「甲子園」という大きな目標を持っていたということ。
そして、同じ目標を持つ仲間たちと一緒だったということ。
それがあるがゆえに、雅人の毎日は苦しくも輝いていたのです。
試合で相手投手の球筋を読むシーンや、
親友との明暗が分かれるメンバー発表のシーン、
そして、結果を電話で家族に伝えるシーンなど、
補欠である雅人の視点で描かれたシーンは、いずれもリアルで秀逸です。
しかし、それほどまでに大切だった甲子園の夢を、
実現直前になって、雅人は自ら捨ててしまいます。
そして、ともに甲子園を目指した仲間とも疎遠になってしまうのです。
恋人とはいつ出会い、どうして別れたのか?
なぜ、求め続けた甲子園の夢を捨ててしまったのか?
物語は、現在と過去を行き来し、謎を解き明かしながら展開します。
読後感は、「爽やか」のひと言!
高校野球ファンはもちろん、そうでない方も、
読めば来年の甲子園が待ち遠しくなること間違いなし!
テレビ中継でほんの一瞬だけ映る、スタンドで応援する選手たち。
彼らを力いっぱい応援したくなる一冊です。