新刊が出たら即買い!と決めている作家がいます。
児童文学では、『バッテリー』のあさのあつこさんに、
『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子さん。
『獣の奏者』の上橋菜穂子さんに、
『家守奇譚』『西の魔女が死んだ』の梨木香歩さん。
そして、今回ご紹介する横山充男さんです。
横山さんは、『少年の海』のような、
人と大自然との関わりを描いた作品で知られる作家。
最近は、『水の精霊』シリーズや『鬼にて候』のように、
人間の根本的かつ究極の問いである「死」や「霊魂」、
さらにはひとの「霊魂」と「神」との関係に迫った、
重厚かつ壮大なファンタジーを発表しています。
今回ご紹介する『幻狼神異記』は、そんな流れを汲む作品。
神異記とは、この世のふしぎを記した書のことである。
扉の一文を目にした瞬間から、“ふしぎ”の世界へと引き込まれます。
主人公は、中学2年生の宗方健(むなかた・たける)。
健はごく普通の少年ですが、実は大きな秘密を抱えています。
邪悪な人間にからまれると、眠っていた力が発動し、
凄まじい暴力となって現われるのです。
じぶんの中には、得体の知れない魔物のようなものがいる。
そんなやっかいな力を自覚しながら、どうすることもできない健。
物語は、その魔物によって「事件」を起こした健が、
學璽院(がくじいん)中学に転校するところからはじまります。
ようやく手に入れた環境で、平穏に暮らそうとする健。
しかし、運命はそれを許しません。
健に潜む大きな謎をめぐり、闇の勢力が動き出すのです。
“バイオレンス&ファンタジー巨編”というキャッチフレーズ通り、
迫力ある筆致で描かれる戦いの場面はかなりリアルで、
時に息苦しさを感じるほど。
それでも物語世界にぐいぐい引き込まれてしまうのは、
「魔物」の存在に一人耐え、その発動を恐れつつも、
普通の中学生として生きようとする健の姿に惹かれるから。
自分はいったい何者なのかと思い悩む健が、
闇の勢力に巻き込まれ翻弄されながらも、少しずつ己の謎を解き明かし、
やがて自らの運命を受け入れる姿は感動的です。
たとえそれが「生涯、戦いの日々になる」という過酷な運命であっても。
「魔物」の正体は? 健が背負った運命とは?
そして、健の力を利用しようとする、闇の勢力の野望とは?
巻を重ねるごとに、重厚感を増すストーリー展開は見事です。
シリーズは全3巻で終わっていますが、
それでもなお、続巻を待ちたくなる面白さ。ぜひご一読を!