3月の『バッテリー』、4月の『風が強く吹いている』と、
体育会系の作品が続きましたので、
今回はガラリと趣向を変えて、大人も子どもも楽しめる、
やさしくて温かなファンタジーをご紹介させていただきます。
舞台は、風早の街の赤い鳥居が立ち並ぶあたりにある、
熱々のおでんと作りたてのお稲荷さんが自慢の
コンビニエンスストア“たそがれ堂”。
“たそがれ堂”は、普通のコンビニとはちょっと違います。
1:銀色の長い髪、金色に光る目をしたレジのお兄さんがいる。
2:この世に売っているすべてのものが並んでいる。
3:この世に売っていないはずのものまでがそろっている。
4:大切な探し物がある人は、ここで必ず見つけられる。
そして、ここが肝心なのですが、
5:行こうと思って行けるとは限らない。――のです。
ほんとうに大切な物を探している人だけが、
たどり着くことができる不思議なコンビニ、“たそがれ堂”。
『コンビニたそがれ堂』には、この店に偶然迷い込んだ、
少年や少女、若い女性など、5人の物語が納められています。
彼らが“たそがれ堂”で手に入れるのは、
受け取らなかったプレゼントやお母さんに捨てられた人形、
懐かしさの漂う桜のストラップなどさまざまですが、
どれも、その人にとっては大切なものばかり。
ほんとうに大切なものを手に入れることで、
主人公たちが生きる勇気と輝きを取り戻す姿は感動的です。
まるで止まっていた時計が再び動き出して、
新たな時を刻み始めるかのように……。
――季節は、もうすぐ梅雨。
ちょっと疲れた日の夜や、静かな日曜の昼下がり、
雨音を聞きながら、ゆったりと読んでいただきたい一冊です。
読めばきっと、赤い鳥居の近くにある、
不思議なたたずまいのコンビニをさがしたくなるはず……。
極上のファンタジーならではの、
ソーダ水のような爽やかな読後感をお楽しみください。