ひとりの作家を追いかけたり、書評を手がかりにしたり。
本には、いろいろな選び方がありますよね。
私は基本的に、好きな作家の「おっかけ」派。
けれどときどき、発作的に「表紙買い」に走ることがあります。
表紙だけを見て、エイヤッと購入してしまうのです。
これはもう、“本の冒険”と言っても過言ではありません。
今回ご紹介する『クロニクル 千古の闇』シリーズは、
数々の冒険の果てに発掘した、ダイヤモンド鉱山のような本です。
まず惹かれたのは、酒井駒子さんの絵でした。
1巻目では、髪の長い少年と幼いオオカミが、
暗がりの中でしっかりと寄り添い、たたずんでいます。
少年の憂いを帯びた表情、オオカミのイタズラっぽいまなざしが、
そこはかとなく“物語”の香りを漂わせ……。
ひとめぼれでした。
あらすじは、こうです。
物語の舞台は、紀元前4000年(今から約6000年前!)の世界。
その頃、人々は小さな氏族に分かれて暮らしていました。
主人公のトラクは、オオカミ族の少年。
物語は、巨大なクマの姿をした悪霊に父を殺されたトラクが、
父との誓いを果たすため、
“天地万物の精霊が宿る山”を探す旅に出るところから始まります。
旅の道連れは、生まれて間もないオオカミの子・ウルフ。
トラクは、さまざまな試練を乗り越えながら旅を続けます。
太古の昔、人がどのように生き、自然と関わっていたのかを、
考古学や民俗学などを踏まえて丁寧に描くことで、
神話にも似た重厚な味わいを醸し出しているのが、
この『クロニクル』シリーズ最大の魅力と言えるでしょう。
面白いのは、ときどき出てくるウルフの視点で書かれた場面。
ウルフは、トラクを<背高尻尾なし>と表現します。
川は<速い水>、火は<熱い舌で刺すまぶしい獣>、死体は<息なし>です。
特徴をよくつかんだ表現はどこかユーモラスで、
厳しい旅の物語の楽しいアクセントとなっています。
現在、日本で出版されているのは、
『オオカミ族の少年』『生霊わたり』『魂食らい』の3巻まで。
それぞれ400ページ超と、かなりのボリュームですが、
ワタリガラス族、アザラシ族、シロギツネ族など、
森や島や氷の海で独自の生活を営む氏族が次々に登場してきたり、
トラクの秘められた力や父の謎が少しずつ明らかにされるなど、
読み始めたが最後、一気に物語の世界に引き込まれること間違いなし!
特に、危機に瀕したトラクが、決してあきらめることなく、
全身全霊をかけて生きようとする姿には胸を打たれます。
――季節は、秋。長い物語を読むにはぴったりの季節です。
トラクといっしょに、冒険の旅に出かけてみませんか。