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読本屋ひより堂おすすめの一冊


 
おすすめの1冊
『クロニクル 千古の闇1・2・3』
1「オオカミ族の少年」・2「生霊わたり」・3「魂食らい」
ミシェル・ペイヴァー著 さくまゆみこ訳

ひとりの作家を追いかけたり、書評を手がかりにしたり。
本には、いろいろな選び方がありますよね。
私は基本的に、好きな作家の「おっかけ」派。
けれどときどき、発作的に「表紙買い」に走ることがあります。
表紙だけを見て、エイヤッと購入してしまうのです。
これはもう、“本の冒険”と言っても過言ではありません。
今回ご紹介する『クロニクル 千古の闇』シリーズは、
数々の冒険の果てに発掘した、ダイヤモンド鉱山のような本です。

まず惹かれたのは、酒井駒子さんの絵でした。
1巻目では、髪の長い少年と幼いオオカミが、
暗がりの中でしっかりと寄り添い、たたずんでいます。
少年の憂いを帯びた表情、オオカミのイタズラっぽいまなざしが、
そこはかとなく“物語”の香りを漂わせ……。
ひとめぼれでした。

あらすじは、こうです。
物語の舞台は、紀元前4000年(今から約6000年前!)の世界。
その頃、人々は小さな氏族に分かれて暮らしていました。
主人公のトラクは、オオカミ族の少年。
物語は、巨大なクマの姿をした悪霊に父を殺されたトラクが、
父との誓いを果たすため、
“天地万物の精霊が宿る山”を探す旅に出るところから始まります。
旅の道連れは、生まれて間もないオオカミの子・ウルフ。
トラクは、さまざまな試練を乗り越えながら旅を続けます。

太古の昔、人がどのように生き、自然と関わっていたのかを、
考古学や民俗学などを踏まえて丁寧に描くことで、
神話にも似た重厚な味わいを醸し出しているのが、
この『クロニクル』シリーズ最大の魅力と言えるでしょう。

面白いのは、ときどき出てくるウルフの視点で書かれた場面。
ウルフは、トラクを<背高尻尾なし>と表現します。
川は<速い水>、火は<熱い舌で刺すまぶしい獣>、死体は<息なし>です。
特徴をよくつかんだ表現はどこかユーモラスで、
厳しい旅の物語の楽しいアクセントとなっています。

現在、日本で出版されているのは、
『オオカミ族の少年』『生霊わたり』『魂食らい』の3巻まで。
それぞれ400ページ超と、かなりのボリュームですが、
ワタリガラス族、アザラシ族、シロギツネ族など、
森や島や氷の海で独自の生活を営む氏族が次々に登場してきたり、
トラクの秘められた力や父の謎が少しずつ明らかにされるなど、
読み始めたが最後、一気に物語の世界に引き込まれること間違いなし!
特に、危機に瀕したトラクが、決してあきらめることなく、
全身全霊をかけて生きようとする姿には胸を打たれます。

――季節は、秋。長い物語を読むにはぴったりの季節です。
トラクといっしょに、冒険の旅に出かけてみませんか。

■『クロニクル 千古の闇1・2・3』ミシェル・ペイヴァー著 さくまゆみこ訳
■評論社 ■1〜3巻各1,890円(税込)
 
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