長編ファンタジーなどボリューム満点の本が続きましたので、
今回は肩の力を抜いて、抜いて、抜きまくって読んでいただきたい、
お気楽ごくらくエッセイ集をご紹介します。
著者は、俳優の小林聡美さん。
『かもめ食堂』や『めがね』といった映画をはじめ、
数々のテレビドラマや舞台で活躍している、あの小林聡美さんです。
役者さんとしても味のある素敵な方ですが、
この方が書く文章がまた、軽妙洒脱で素敵なのです。
今回ご紹介する本のカバーには、こう書いてありました。
「ささやかな出来事が、簡単にシアワセにしてくれる」
さらに、こうありました。「どうにも笑えて、味わい深い」と。
まさに、まさに、その通り!
「大殺界」「マユゲ」「ペット」「パソコン」「散髪」「免許証」……etc.
テーマはほとんど、誰もが体験し得る日常の出来事です。
それが、小林さんというフィルターを通すと、
妙に面白く、妙に味のあるもののように思えてくるから不思議。
たとえば、『大殺界のセコいのりきり方』というエッセイ。
大殺界に入ったら、三年間、新しいことをはじめてはいけないと
占い師にアドバイスされた小林さんは一計を案じます。【以下引用】
* * *
しかし、だからといって、なにもせずにノボーっと三十代を見送って、ダラーっと四十代を迎えていいものか。「四十の手習い」という、希望に満ちたその言葉を、かたちのない運命の恐怖に怯えて見送っていいものか。いや、いかん。それはいかん。
そこで、ワタシは、ある策を考えた。
それは、要するに、冬の時期が始まってから新しいことを始めるのが良くないわけだから、その前になにか楽しいことを始めて、向こう三年間、とぼけて乗り切ろうではないか、というものだ。
* * *
こうして小林さんは、大殺界を迎える前に「陶芸」をはじめ、
車を買い替え、部屋の模様替えをし、スポーツクラブにも登録します。
そして最後に、こう自戒するのです。【以下引用】
* * *
……こんなセコい策を練って喜んでいる自分が、今、ふと、かなり嫌になった。セコい。セコすぎっ。なんかがっかり。こんなことで、まわりを固めて安心しているなんて、かなりカッコ悪い。
* * *
作家・幸田文さんの随筆を「居合」とするならば、
小林聡美さんの飄々としたエッセイはまさに「酔拳」の味わい。
シンプルを好むライフスタイルや、お気楽を善しとする考え方など、
随所に出てくる小林さんらしさが愉快で、痛快で、
大笑いしながら読み終えた後の気分はめっぽう爽やかです。
もの思う秋、ときには誰かの軽快な生き方にふれてみるのも一興。
『ワタシは最高にツイている』は、肩の力がスーっと抜けて、
日々のささやかな出来事がむしょうに愛しく思えてくる、そんな一冊です。
なので、今回ばかりは力を入れず、ほよよ〜んとおすすめします。