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たわわ書房おすすめの一冊

 
おすすめの一冊
『お姫様とジェンダー』  若桑みどり 著

「待っていればいつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれる」
そして二人はめでたく結ばれてお・し・ま・い。
子どもの頃目にしたお姫様の出てくるお話って
だいたいこんなストーリーだったと思いません?

たいていのお姫様は
美しく気立てがよく守られるべきか弱き存在として描かれ、
いつか王子様が迎えに来てくれて、もしくは助け出してくれて
めでたく結婚して幸せに暮らしました〜、でお話が終わる。
女の子なら多かれ少なかれ誰しも一度ぐらいは憧れたのではないでしょうか?

でもね、先月亡くなられた若桑みどりさんの本書を読むと
見た目美しく、でも頭の中身はなく、自分で自分の人生を切り開かない他力本願な女。
なんですよね、お姫様って。

私たちが成長の過程で
夢いっぱいに享受してきたプリンセス・ストーリーは、
実は凝り固まったジェンダーの刷り込みだったの〜!!
と唖然・茫然、びっくりです。

ジェンダーや男女共同参画なんて言葉はまだまだ新しいもので
それ以前、女は子どもを産み育てるのが仕事。
「私的領域」に囲い込まれることこそが幸せであり、
自分の才能を磨いたり学問に打ち込んだりすることは不必要であり不幸なこととされていた、
と著者は述べています。
いまどき、こんな発言したら大変なことになりそうですが
日本には「女は子どもを産む機械」なんて平気で言っちゃう大臣が
ついこの間まで存在してましたからね〜。

そして、物語は結婚してハッピーエンドだけど、
現実の人生は結婚で終わりではなく
美しかった姫も老い、腰痛や更年期、中年ぶとり、
はたまた子どもの反抗期に悩まされたり、
若く勇敢だった王子も体力が衰え
メタボリックシンドロームのおじさんになり、
くどくど何度も同じことを話したり
徘徊を繰り返す患者として過ごす年月のほうが
はるかに長いかもしれない、ですよね。

この本では、典型的プリンセスストーリーと思われる
ディズニーアニメの「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」を取り上げ、
女子大生(著者は川村学園女子大の教師)に見せ、
書いてもらった感想からさまざまな考察がされていて面白い。

学生の感想は大別して3つのパターン。
たとえば白雪姫

  1. プリンセス大好き「とっても夢があって素敵なお話だと思います」
  2. やや批判的「白雪姫があたりまえのように家事をこなし、こびとたちは女はそういう生き物だと決めつけているようなところがあった。私はそういう部分は女性差別のような気がします」「(女性は)自分が白雪姫であると同時に継母であることを無意識に知っているのです」
  3. 批判的「白雪姫は他力本願である」「白い肌、赤い唇、大きな目・・これは男から好かれるタイプを露骨に表わしている。この物語の言いたいことは、女性の成功とは地位の高い男から愛されて養われることである・・・」

学生の中には
シンデレラについて
「わざと靴を忘れた確信犯」とか
「王子に気に入られたいために
きれいなドレス(外見)に変身して馬車(財産)に乗り
お城に行くのだから下心は姉たちと同じ」
などなど幼い頃とは違った感想がでてきているようで興味深いです。

また、私にとってすごくびっくりだったのは
ディズニーが
典型的家父長制家庭に育ち、
熱心な反ユダヤ主義者、反共主義者であり、
日米開戦の1年前正式にFBIのハリウッド情報提供者になった、ということ。
彼はグリムの原作をかなり彼流にアレンジしてアニメを制作したようで、
もとのグリムのお話とはだいぶ違った筋立てになっているようです。

そして石塚正英の研究によれば
「ナチスは自己の思想を宣伝するのに大いにグリムを利用した。
たとえば第二次大戦中に
<赤ずきんのオオカミはユダヤ人であり、
赤ずきんはドイツ人
赤ずきんを救い出す漁師は国民を解放するアドルフ・ヒトラーである>と宣伝した」
とあり、華やかなハッピーエンドのプリンセスストーリーの背後には
国家戦略やらジェンダー観の刷り込みやらいろんなものが隠れていたんだなあと
無知な私は感心しつつもらショックでした。

そして著者は最後のほうで学生たちに向けたメッセージとして

「お姫様、自分で目覚めなさい!!」

と言っています。
もう、王子様を待ってる時代じゃない!!
自分で目覚め、いばらの道を切り開き
自分の足で立って、自分の人生を生きましょうよ!
と学生だけでなくすべての女性たちに向け
エールを送ってくださっているのだと思います。

やはり先ごろ亡くなられた「猿橋賞」の創設者である
女性科学者猿橋勝子さんのことも最近知り、
先輩の女性たちがこうして苦労して道を切り開いてきてくれたからこそ
私たちは今、大手を振ってその上を歩けるのだあ・・・とつくづく思うのです。

フェミニズムやジェンダー学を
たくさんやってこられた方には少々物足りないかもしれませんが、
入門編としてはわかりやすい1冊だと思います。

■『お姫様とジェンダー』 若桑みどり 著
■ちくま新書 ■714円
 
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