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たわわ書房おすすめの一冊

 
おすすめの一冊
『苔とあるく』
田中美穂 著

フキノトウが香り、こぶしやサクラの蕾もふくらんで
ものみな動き出す春ですね。

なんだか雪の少ない冬で拍子抜けでしたが、
体が楽だった反面、
これも温暖化の影響?と水不足になりそうな
夏が心配になります。

さてさて、ミミズもモグラもぼちぼち顔を出しそうですが、
この、ちいさいイキモノたちを眺めるのにも
これからはいい季節かもしれません。

そのイキモノとはもちろん「苔(コケ)」。
そう、あの、どこにでも生えてくるヤツです。

一時期ガーデニング業界では「苔玉ブーム」がありましたが、
私は以前花やハーブの苗をつくる仕事をしていたので
芽がでてようやく育ってきた草花の育苗ポットやプランターに
コケが生えてくると
「このにっくき奴め!」とばかり
剥がしにかかっていたものですが、
この本のページをめくると
私が苔に対してもっていた印象とは
まったく違った世界が広がっており、
その美しさといとおしさにため息が出ます。

この、生態も性格もちょっと変わった植物は
葉も茎もあるけれど根っこがない!!
機会があれば道端のコケをちょっとつまんでみてください。
ね、あっけないくらいすぐ]Rがれますよね。
コケは根っこからではなく、
体の表面全体から空気中のかすかな湿り気や陽の光などを取り込んで
それを栄養分にかえて成長しているのだそうです。

花も咲かない!!
ので、実はなりません。
種や球根ではなく胞子をとばして繁殖します。
だから一定の条件が整えば芽を出し成長するけれど
条件がそろわなければ育たない繊細なイキモノなんですね〜。

著者の田中美穂さんはbiyori世代の女性で
岡山の「蟲文庫」という名前の素敵な古書店の店主です。
はじめて顕微鏡でコケを見たとき
「顕微鏡がほしい」と思ったそうです。
このときの感動が彼女をこの道へ導いたのか?
田中さんは岡山コケの会、日本蘚苔類学会員でもあります。
数年前には写真家の伊沢正名さんから
「この辺りのコケマップをつくりましょう。
山へ行けば大きくて見栄えのするコケがいくらでもあるけれど
町中の地味なコケだって、
じっくり見ればすごくきれいなんですから」
と持ちかけられ、
A3変形の、パンフレット状に折りたたんで携帯できる
「岡山コケマップ」も発行されています。
この写真がまた美しく、小さきものに対するお二人の
並みならぬ愛情が満ち満ちています。

いつか岡山に行って蟲文庫を訪ね、
マップ片手に散策してみたいです。

ビロードのような感触のモノ、海藻のようなモノ、
はかなげなモノ、花のような美しいカタチを持つモノ・・・
と個性的なコケたちの写真を見ていくと
田中さんが苔に惹かれるのもなんだか頷けます。

コケ観察は1時間に1メートル。

ルーペ片手にあれこれ「発見」したり
「コケの目」になってコケが見えてくるようになると、
もっといろいろ見てみたいという気持ちになり、
気がついたら1時間以上たっていた・・・なんてことが
観察会ではよくあるそうです。

―まだここには
水と土と雲と霧しかなかった何億年の昔
見渡してもまだ泳ぐものも這うものも
見当たらなかったおどろの時
濠濠の水蒸気がすこし晴れたばかりのしののめ
お前は陽と湿り気の中からかすかに生まれたのです
なぜと云って
地球がみどりの着物をとても着たがっていたから―
(永瀬清子「苔について」より抜粋)

見返しに入れられたこの永瀬さんの詩や
表紙裏(なんと!猫の足とコケの写真のアップがカラープリントされています!)にも
著者のコケに対する愛情が伝わってきます。
かわいいイラストや写真も満載で
きっと読後はコケを見る目が変わってきますよ♪

さあ、本書を片手に
庭や道端の些細なところに息づいている
小さなコケたちの世界を覗いてみましょう!
一種タイムトリップしたようなめくるめく不思議な世界が
体感できるかもしれませんよ。

■『苔とあるく』 田中美穂 著
■WAVE出版 ■各1,600円+税
 
このカフェの本棚
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『たったひとつの命だから2』
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