東北日和について
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大学教授として長年にわたって家族社会学を研究する一方、男女共同参画やジェンダーの問題にも積極的に取り組んでいる遠藤恵子さん。2006年4月からは、山形県立米沢女子短期大学の学長に就任。新たな環境の中、これからの家族や女性のあり方を考え、社会への働きかけを行っていらっしゃいます。「教員になる予定なんて全然なかったんですよ」と話す遠藤さんに、これまでのキャリアや仕事に対する熱い想いを伺いました。
ーー 先生は長年にわたって大学で家族社会学を専門に研究しておられますが、小さい頃から教育者、研究者を目指していたのですか。
遠藤 全然。これっぽっちも考えていませんでした(笑)。小学校、中学校時代の夢は探検家になることでした。アムンゼンやヒラリーの探検に夢中でね。スウェン・ヘディンがゴビ砂漠でロプノールという移動する湖を発見した記録『さまよえる湖』を読んだのも、確か中学生の頃でした。高校生のときは、ジャーナリストになりたいと思っていました。朝日新聞で連載されていた本多勝一のルポルタージュ『極限の民族』に感銘を受けて、「なるほど、こういう仕事もあるのか。やってみたいな」って。それでいろいろ調べてみると、ジャーナリストになるなら社会学を勉強した方がいいということで、東北大学に入学したわけです。当時は山歩きなども好きで、夏休みにはよく出かけていましたね。卒論はマスコミ論で、沖縄の地域新聞をとりあげました。
ーー 卒業後は出版社に就職されているんですよね。
遠藤 本当は新聞社に入りたかったのだけれど、昭和42年当時はどこも女子の採用がまったくなかったのね。それで仕方なく就職したのが医学専門の出版社。仕方なくって言うとその会社に悪いんだけど(笑)。でも、その出版社での経験はとても貴重なものでした。まず、男女差別がまったくない。女性の管理職もいたし、お茶汲みも飲みたい人がすればという雰囲気。有能なら男女関係なく登用するという考え方で、業績も右肩上がりでした。しかも自由で、朝「取材に行ってきます!」と会社に電話して、堂々と遅刻して行ったり(笑)。この会社を辞めるまでは、どこも同じなのだろうと思っていたのだけれど、ちがうのね(笑)。ただ、有能な人に会えば会うほど、まだまだ勉強が足りないと感じていたのも事実。それで2年後、親のすすめで仙台に戻って結婚したとき、「後悔したくない!」という思いで大学院に進学したのです。
ーー 大学院で家族社会学を専攻されたきっかけは?
遠藤 新婚旅行から帰った日に、夫から「僕のお弁当つくって」と言われたんです。当時、夫は研修医で私は大学院生。「対等な関係と思っていたのになぜ?」と、本当に驚きました。しばらく議論しましたが、妻が家事をするというのが日本の男性の一般的な常識と初めて知りました。すでに子どももいましたので、父母がいつまでも対立するのは教育上よくないと判断し離婚しました。そのとき、「夫婦って、家族って何だろう?」と思ったことが家族社会学を勉強するきっかけになり、ジェンダーへの関心につながったのです。結婚、大学院進学、出産、離婚。これだけのことが一時期に集中したせいで、修士課程を修了するまで4年もかかってしまいました。その後、白百合短大に就職したのですが、これはもうまったくの偶然。大学の先生って比較的時間が自由になりそうで、子どもを育てながら働くには都合がいいだろうと思ったんですね。もちろん、実際は全然ちがったのですが。それでしばらくしたら、マスコミ論を研究されていた東北学院大学の五十嵐先生(故人)に、家族社会学を教えてくれと声をかけていただいた。「あんだなら離婚してっぺし、ここさずっといるすぺ?」って(笑)。本当に人生、何が幸いするかわかりませんね。
ーー 家族社会学というのはどのような学問なのでしょう。
遠藤 意外に思われるかもしれませんが、「家族」って、家族法という総称はあるものの、法律では明確に定義されていないんです。たとえば「ご家族は?」と聞かれても、必ずしも同居が条件ではないし、人によってその括りは異なります。しかもいちばん身近な存在で、誰より知っていると思い込んでいるけれど、実はそうじゃない。そういった家族の捉え方が、時代によって、社会によってどのように変化しているのか、その根本は何なのかといったことを、様々な調査活動を通じて考察していくのが家族社会学です。地道なデータの蓄積が大事なので、学生を連れてしょっちゅうあちこちに出かけています。ただ、学生からは「いつもギャーギャー騒でるうるさい先生」と思われてるんじゃないかしら。他人にストレスを与えるけれど、自分ではためないタイプなもので(笑)。研究室にもしょっちゅう学生が集まってきますよ。放っておくと、いつしか私の存在を忘れて言いたい放題。他の先生の悪口言ったり(笑)。でも、よくよく聞いてみると、みんな見てないようでちゃんと見ているんですよね。分析なんかしたりして。学生の着眼に対して「そういう見方考え方もあるのか」と、私自身が思うこともしばしばです。
遠藤 恵子(えんどう けいこ)
財団法人せんだい男女共同参画財団
理事長
1944年仙台市生まれ。
東北大学文学部卒業。出版社勤務を経て東北大学大学院文学研究科修士課程修了。
1974年
白百合女子短期大学講師。
1981年
東北学院大学教養部講師。
1990年
東北学院大学教養学部教授。
2006年
4月より山形県立米沢女子短期大学学長。財団法人せんだい男女共同参画財団理事長をはじめ、仙台市住宅基本計画審議会委員など多数の審議会委員を務める。
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