東北日和について
メンバー登録
前回に引き続き遠藤恵子さんへ、これまでのキャリアや仕事に対する熱い想いを伺いました。
ーー まさに離婚や子育てといった先生ご自身の切実な問題意識が、家族社会学を勉強する原動力になったのですね。
遠藤 本で読んだ知識ではなく、実感として様々なことを吸収してきたことが、家族社会学を研究する上で大きく役立ちました。たとえば、当時は保育所も未整備だし、育児休業もない時代で、社会的な支援の必要性をしみじみと感じました。子どもは家族の一員であるけれど、未来の社会の構成員でもある。そういう視点を持たないと、子どもを産む女性がどんどん減っていくぞという危機感もありました。かつての、といっても戦前の時代ですが、日本にはそういう視点が実はあったのですね。共働きはあたりまえで、子どもは放ったらかし。躾をしてくれたのは、祖父母や近所のおじさんおばさん。生活が地域に密着していた時代には、地域みんなで子どもを育てていく仕組みがあった。それが産業社会になり、経済の仕組みが変わって、子どもの面倒をみるのは両親の責任という風潮になっていった。育児ノイローゼや過保護の問題がクローズアップされてきたのも、近年になってのことです。
ーー やはり社会のサポートが必要である、と?
遠藤 ええ。でも行政だけでは限界があります。企業も率先して支援していく仕組みをつくっていかないと、子どもの数はなかなか増えていかないでしょう。もちろん、体力や余裕のある企業ばかりではないことも理解しています。ただ、何らかの対策をしなければゴールは見えてきません。男性も育児休暇をとりやすくするなど、企業そのものの考え方が変わっていくことが、真の男女共同参画を実現する上で不可欠なのではないでしょうか。制度の面から整備していくことが必要だと思います。何年か前の話ですが、国土交通省の東北地方整備局の男性係長さんが、さりげなく育児休暇をとりました。とてもいいことだなと思いました。男性も肩肘張らずに育児休暇がとれるようになれば、男女共同参画の意識も浸透していくのではないでしょうか。振り返れば私も、子どもをおんぶして出勤して、講義の間だけ研究室に閉じ込めておいたり(笑)、友人にみてもらったり、いろいろやりくりしましたね。今やその子も社会人。月日が流れるのは早いなとしみじみ感じます。
ーー 現在、「財団法人せんだい男女共同参画財団」の理事長を務めてらっしゃいますが、どのような経緯で携わることになったのですか。
遠藤 家族の問題を扱っていますと、同時にジェンダーの問題が避けて通れないということで、東北学院大学ではジェンダー論の講義も担当していました。それで声をかけていただいたのだと思います。「仙台市における女性の自立と社会参画を促進する事業や男女平等を阻害する様々な問題の解決をめざした市民の主体的な活動の援助育成を行うとともに,男女平等の社会的風土づくりを進め,『男女平等のまち・仙台』の早期実現に寄与する」という財団の目的にも共感しました。ただ、最初は「理事」ということだったのに、2週間後には「長」がついた。「こまる、約束がちがう!」って(笑)。でも、日頃から「女性は責任の大きさに尻込みしてはいけない。率先して行動する意識を持とう」なんて言ってるのに、断ったら主義主張に反する。そういうわけで微力ながらやらせていただきます、と。
ーー 活動の成果についてはどのように感じてらっしゃいますか。
遠藤 発足して5年(2001年4月設立)がたちますが、力不足を感じる部分は否めません。一般的には、まだまだ問題意識が浸透していないと感じています。そこで、もっと広い範囲の人たちに理解していただくための努力を重ねていこうという思いを込めて決めたのが、「100万市民とともにつくる男女の人権尊重のまちづくり」という中長期計画です。職員みんなでアイディアを出し合って決めました。この指針のもと、息の長い活動を続けていければと考えています。
ーー お忙しそうですが、休日はどのようにお過ごしですか。
遠藤 母と同居しているので、休日は掃除、洗濯、食事の用意で終わってしまいますね。食事をつくるのが嫌で離婚したのに「どうして?」って気分(笑)。もし時間ができたら、乗馬を楽しみたいですね。こう見えて、大学時代は乗馬部に所属していたんですよ。今も民間の乗馬クラブに入っているのですが、月1回行けるか行けないかという程度なんです。
ーーこの春、山形県立米沢女子短期大学の学長に就任されましたが、どのようなビジョンをお持ちですか。
遠藤 女性のエンパワーメントのお役に立てればと考えています。出産や育児といった面をサポートできる社会の仕組みをつくっていきたいですね。女性がイキイキと、パワフルに仕事と向き合うことのできる環境は絶対に必要。大学でも、日頃から女子学生に「仕事は辞めるな。もし辞めるとしても、ちゃんとステップアップできる目処がついてから」って言ってるんですよ。
ーー 今後の仕事との関わりについての考えをお聞かせください。
遠藤 家族社会学とジェンダーの問題については、これからも地道に研究を続けていきたいと思っています。課題としては、先程も申し上げたように、企業をどう動かしていくか。企業の社会的責任の一つとして男女の差別をしない、共同参画を推進するという流れをどのようにつくっていくかでしょう。福祉先進圏といわれる北欧の事例を見ますと、銀行や製造業の企業では自社で導入する男女平等のための制度を取引先企業にも求める傾向になっています。男女共同参画は、長い目で見れば自社にとって得なんですよということを、これからも言い続けていくしかないです。それと、これは女性に限らない話だけれども、「仕事は楽しく」が基本だと思います。それは最初から楽しい場合もあるし、後から楽しくなる場合もある。私は完全に後者。先生になる気はなかったけれど、これまでたくさんの素敵な出会いや発見に巡り会えた。人によって考え方はちがうと思いますが、たとえ何歳になっても、自分に対して限定的な見方をせず、ぜひいろいろなことに挑戦してほしいなと思います。
遠藤 恵子(えんどう けいこ)
財団法人せんだい男女共同参画財団
理事長
1944年仙台市生まれ。
東北大学文学部卒業。出版社勤務を経て東北大学大学院文学研究科修士課程修了。
1974年
白百合女子短期大学講師。
1981年
東北学院大学教養部講師。
1990年
東北学院大学教養学部教授。
2006年
4月より山形県立米沢女子短期大学学長。財団法人せんだい男女共同参画財団理事長をはじめ、仙台市住宅基本計画審議会委員など多数の審議会委員を務める。
←前編へ戻る
vol.024
佐藤律子さん
vol.023
ケセラセラ 代表 森瀬はるみさん
vol.022
七ヶ宿の白炭 生産者 佐藤円さん
vol.021
伊達なママの会 会長 鈴木せつ子さん
vol.020
アイリッシュハープ奏者 月輪まり子さん
vol.019
日本和装学園・NPO法人日本礼美協会 仙台青葉カルチャー本校 学園長 小原優子さん
vol.018
噺家 川野目亭南天さん
vol.017
陶芸家 鈴木ハツミさん
vol.016
アナウンサー・言の葉アーティスト 渡辺祥子さん
vol.015
Studio Fahren 高木雅美さん
vol.014
ソプラノ 相澤佳代子さん
vol.013
阿部さやかフローラルセミナー 阿部さやかさん
vol.012
La Famille Mouton 高橋由香さん
vol.011
ピアノ奏者 武井美樹さん
vol.010
亀田陽子さん
vol.009
果樹園うめつ
梅津留美さん
vol.008
フリーランスアナウンサー
阿部侑生さん
vol.007
(有)ミナ・コーポレーション
代表取締役 長久保美奈さん
vol.006
フードコーディネーター
落合順子さん
vol.005
荒岩本店 常務取締役
リフレクソロジスト 荒井美佐子さん
vol.004
(有)モイスティーヌ仙台販売
代表取締役社長 名倉 愛さん
vol.003
みやぎグリーン購入ネットワーク
事務局長 山岡講子さん
vol.002
マリンバ奏者 渡辺峰子さん
vol.001
財団法人せんだい男女共同参画財団
理事長 遠藤 恵子さん
▲ページの先頭へ