東北日和について
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この日のハーブティーは、澄んだすみれ色。少し時間をおくと淡いさくら色へと変わっていきます。その時々の気分に合わせて、お茶の色と香りを楽しむ荒井さん。素敵な過ごし方のもとをたどれば、そこには抜け出せないかに思えた沈んだ時期がありました。だからこそ感謝できる、日々のこと。その生き方、考え方をうかがいます。
―― このハーブティー、すっきりした色と香りですね。
ブルーやむらさき系は脳に働きかけ、気分を落ち着かせてくれます。ハーブなど植物は、食べ物と同じ。生命力を与えてくれるんです。こうしたことに意識が向いたのも、31歳のとき倒れたから。
結婚するまでお茶とお花しか習ったことがなくて、「お手伝いさんが2人いるから大丈夫」と言われてきたんですが、結婚したとたんにお手伝いさんが2人とも「お嫁さんが来られたことですし」と辞めてしまって(笑)。それに加えて、宮城県沖地震があって。家が傷んだのを機にビルを建て、卸売業から小売業への転換を図ったんです。そのときからお店の品ぞろえなど、ソフト面で力を発揮する機会をもらいました。
その後、義父が寝たきりになって。いまのような介護のサポートシステムもなく、商家の嫁が看取るのが当たり前の時代です。父の介護にとにかく集中しました。
―― 介護に家事、お店の運営と、たいへんだったでしょう。
でも自分は体が丈夫だから、病気なんかしないと思い込んでいたんです。床ずれで眠れない義父を、夜2時間おきに体位交換して。自分の睡眠のリズムが崩れていることにも気づかず、東京に日帰りで仕入れに行ったりしていました。それまで病気をしたことがなかったから、カゼをひいて熱で倒れ、救急車で運ばれるまで気づかなかったくらい。体から始まった病気が、心まで病気になってしまって……。いま思うとパニック症候群だったんじゃないかと思いますが、このまま死ぬかも、という恐怖におびえる毎日でした。一睡もできず、食事も取れず、めまいに吐き気、過呼吸。枕から頭も上げられなくなって、実家の母に連れて帰られたんです。
―― ご実家で、ゆっくりご静養を?
それが、結婚しているのに離縁になったらどうしようという恐怖で、心も体もどん底。ウツ状態になってしまいました。
内科で言われた「自律神経障害だから、うちでは治らない」という言葉も、刃物で傷を負わされたような痛手になって。原因はわからず、食事はもちろん、水も飲めない。口から取るとよくないと脳が反応するんでしょう。薬も吐きだしてしまうんです。歩くことも、起き上がることもできず、治る見込みさえない。死にたいと思いました。何度も、何度も。死しか見つめていないときがありました。
それを知った親戚の鍼灸師のおじいちゃんから、「あなたの中に治る力があるんだから通っておいで」と言われて、救いを求めるように毎日通いました。
―― 治療で、少しは上向きに?
鍼灸治療で体を整えてもらいましたが、心を整えてくれたのは奥さまのおばあちゃん。私の心の中にあるモヤモヤや、気づかない不平、不満を吐きださせてくれました。そうすると、私が1人でシャカリキになって介護してパーフェクトと思っていたことも、自分のワガママ心でがんばっていたんだと気づいて、周りの力を借りることの大切さがわかりました。周りのひとに優しく、あたたかく接するには、私の健康が大事だと気づいたんです。
母は栄養のある食事を作ってくれて、眠れないときは生活のリズムをつくってくれました。そして、一番大きかったのは主人の言葉です。主人は子どもの頃から体が弱く、入院することも多くて。病院で一緒に遊んでいた子のベッドのカーテンを、翌日開けてみるといないという死と向き合う経験を何度もしています。だから、人の体調や心の動きに敏感なんです。
ウツの人を励ましてはいけないと言われますが、主人は私がひと口でも水を飲めたとき「自分で水が飲めたなんてすごいことじゃない」と励まし、歩くことができないときも「起き上がれなくても、トイレにいく元気はあるでしょう。目も見えるし、耳も聞こえる。自分ではダメだと思っているかもしれないけど、障害でそれができない人にとっては、うらやましいことじゃない」と。
そのころ死ぬことしか考えていなかったけれど、その言葉に“生きていて幸福”だと感じられました。命を絶っていたら、私自身を取り戻すことも、リフレクソロジーに出合うこともなかったかも。
荒井美佐子さん
Arai Misako
家族構成/夫
仙台市生まれ
宮城学院女子大学の英文学科を卒業
企業に約2年勤めた後、結婚
婚家が卸業から小売業へ変わるのに伴い、ショップの運営に携わる
体調をくずし、6カ月療養
リフレクソロジーを学び、資格を取得
フィトテラピー(植物療法)を学び、国際植物療法協会の東北仙台本校を開校
リフレクソロジーサロンやフィトテラピースクールを通して、癒し、癒される毎日。
カゼひきさんかな、気分が興奮しているのかな。相手を思いながらハーブティーを入れる。これはノドによく、リラックスできるお茶。
100年以上農薬を使っていない畑で育てられたフランス製ハーブティー。自然の土に生かされたハーブに、ひとが生かされる。
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