東北日和について
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すっかり土地の人のように、実の娘のように、婚家になじんでいる梅津留美さん。山形に来て20年。女学校の同窓会では、先生から「ちゃんとやっていらっしゃるの?」と心配されるけれど、今年も1袋30kgの新米を抱え、お義父さんとふたりで160袋を蔵に上げたそう。「大変だったよね、お父さん」と笑い飛ばすたくましさは、しっかり農家の嫁をしています。
―― いつから、農業に関わるように?
高校のとき、有吉佐和子の『複合汚染』を読んで、農家に憧れたんです。それで大学は農学部にいって。実践的な大学だったので、実習で北海道の牧場に行ったり、九州のポンカン園に行ったり。農家を知りたくて夏休みに1カ月、千葉の農家に住み込んだこともありました。
農家の人って、とても働き者なんですよね。学問の農業と実際の農業は違っていて、農家のたいへんさは知っていたし、そこで一番たいへんなのがお嫁さんというのも、わかっていました。
―― 渋谷で育って、農業へのギャップは?
それは、ありました。都会で土もないところに育って、表参道の石垣や宮下公園が遊び場で、買いものは東急デパートという環境でしたから。習い事も英語と日本舞踊、小学校から高校まで東京女学館という枠の中で育ったので、大学に入って農業実習の時、作業着を着て、長靴をはいたときは、こんな世界があるんだなあって。
――
それでも、農業とご縁があったんですね。
主人が大学の同級生で、学生のころから山形には何度か来ていたんです。初めて山形空港に着いたときは、周りが真っ暗で、お店もほとんどない。大学を卒業してからも、主人が山形、私が東京で遠距離でつながっていたんです。主人は農家の長男で、本家で、やっていけるか不安もあったんですけど、縁あって来ることになりました。
結婚式はどうしてもサクランボの時期にしたかったから、6月下旬のサクランボの盛りのときに東根温泉の旅館で1日1組の結婚式をしました。いま思えば、忙しいときに、すごくたいへんな思いをさせてしまったなと思うんですけど。東京からの友人や親戚30人くらいに“サクランボ狩りツアー”を、とても喜んでもらえました。それからなんです、「送って」と頼まれるようになって、個人に販売するようになったのは。
―― 農家の生活は、どんなスタートに?
そのころは、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんがいて、お父さん、お母さんと6人家族だったんです。父と母は会社に勤めていて、仕事に行く前に朝仕事をして。私は家事をして。朝起きたら、まず、そうじ。トイレ、おふろ、台所の拭きそうじ。座敷をほうきではいて。結婚する前に3階建ての新築にしてくれて義母がとてもきれい好きだったんですね。
朝、食事を作って、お弁当をつめて、アルバイトをして、戻ってから夕食の準備をして。それが、畑で採れるものを料理するので、5月だったら葉っぱばっかり。毎日、どうしよう……と思っていました。
主人は会社に勤めていて、夜10時ごろじゃないと帰ってこないから、先に家族で食事をするんです。父と母はとても理解があって、苦労しないように気づかってくれましたが、言葉がわからないし、今日は何の話をしてんのかな、という感じで。この辺りでは、キャベツのことを玉菜(たまな)と言うんですが、それもわからないし。みんな食べるのも早くて、なんか食べた気がしなくて。主人が帰ってきてから、また一緒に話しながら食べるという感じで、結婚して10キロも太ってしまいました(笑)。
―― 東京に帰りたいと思ったことは?
嫁いですぐのころ、この辺りの空を東京行きの最終便が飛ぶんです。その時間帯は、畑で豆をもいでいたりして、飛行機を見上げて、ジワーッとくることもありました。ここが居場所と思いはじめたのは、1年半くらいして長女が生まれてからです。
言葉もわからず、生活習慣も違ったけれど、食べものは、本当においしくて。それまでは買ったものしか食べたことがなかったから、採れたてのおいしさを初めて知ったというか。野菜も母がつくってくれますから、枝豆も採ってきたら、そのまま茹でて食べるし。料理を母にならったり、昔ながらのしそ巻き
(※1)
をひいおばあちゃんに教えてもらったり。教えてもらったいも煮
(※2)
は、母はゴボウを入れるけど、私は油揚げを入れるといった感じにアレンジしたりして。田舎暮らしがとても贅沢な生活をしていると思うようになりました。
果樹園うめつ
http://www.h6.dion.ne.jp/~sr-umetu
おかげさまで今年のラフランスは予約でいっぱいになりました。
梅津留美さん
Umetsu Rumi
家族構成/義父、義母、夫、長女、長男
1960年
東京都渋谷区生まれ
1983年
玉川大学 農学部を卒業
大学職員として勤務
1986年
結婚し、山形へ
夫の実家に同居し、新生活をスタート
1990年
夫の転勤で酒田へ
サクランボとラ・フランスの時期は、実家を手伝いに
1994年
夫の転勤で仙台へ
仙台から山形まで車で片道1時間半かけて週3日ほど通い、農作業を手伝う。口コミやHPでおいしさと安心感が伝わり、関東や関西からもフルーツや米の依頼が増加中。
400坪の敷地内にある畑で、ナスやアスパラ、白菜など、季節ごとの野菜が採れる。採れたてはキュキュッとした食感。
ほのかな天然の甘みがあるナス漬けに、ピリッとした青菜漬け、歯ごたえのいいキュウリのからし漬けは、お義母さんお手製。
※1
しそ巻き
味噌に砂糖を加え、くるみや唐辛子などを混ぜいれ、青しその葉で巻いて、揚げ焼きにした、ふるさとの味。
※2
いも煮
里芋、牛肉、こんにゃく、長ネギなどを、しょうゆ味で煮た郷土料理。
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