フレンチカントリーを思わせる玄関を入ると、リビングまでイメージそのまま。温かみのある小物や写真が飾られ、グランドピアノがあり、暮らしを楽しんでいるのが伝わってきます。手作りのお菓子と紅茶でもてなす、亀田陽子さんのゆるやかな時間。そんな生活を楽しめるようになったのは、ほんの1年前からだそう。その心の内をうかがいました。


がんばりすぎない生活にリセット

―― 素敵ですね、お住まいも、手作りのお菓子も。

ありがとうございます。 そんなに手間はかかっていないんです。お菓子はパイシートを使って簡単に作ったものですから(笑)。フェルトもそうですが、手作りするのが好きで、でも仕事と育児で手一杯だったので、いつかはと思って先のばししていたことが多かったんですが、いまはいつかと思っていたことをしています。以前は専業主婦になるのに抵抗があったんです。もともと実家がお店をしていて、働くことが当たり前の環境でしたから。経済的に自立していたいと調律師の資格も取りましたし。

―― がんがわかる前の生活は?

まず仕事がメインでした。予定がうまっていることを充実していると思っていて。子どもが生まれてからは、いいお母さんしなきゃと思ったし、家事もおろそかにしたくなかったし。今思うとすべてのことにがんばってたなぁって。家の中を走り回って、自分のことが何もできなくても、多少つらいことがあっても、好きな仕事をしているんだし、贅沢を言ったらいけないな。そして自分はそうしなければいけないんだと思い込んでました。

―― がんがわかって、頭に浮かんだのは?

お医者さまから「がん、です。」と言われたとき “助けられた”と思ったんです。そしてすごく時間が貴重だ、と。自分の時間がほしい、と思いました。なにもしていない時間が。それまでは、この道を行くことがいいのだと思っていましたが、 「間違ってるよ」って言われた気がしました。


宣告は、多忙な日々からの救いの手

―― それまで体の調子は?


健康だけが、とりえだと思っていたんです(笑)。でも、調子の悪いところは細々あって。けんしょう炎もあったんですけど、職業病かなと。肩こりとも違う痛みだけどと思いながら、整体に通ったりしていました。
子どもの授乳をやめてから、胸にしこりはあったんです。でも、良性だし、と思って、仕事と育児で自分のことはおろそかになっていましたね。母から「あのしこり、どうなってるの」と言われて、自分も気になっていたので、検診に行ってみたんです。お医者さまからは最初「異常ないです」と言われたんですけど、着替えていたら、「ちょっと、もう1度来て」と言われ行ってみると、「別のところに影があって、気になる」と。エコーの画像を見たら、アメーバーみたいで。これは決まりだ。と思って。検査結果が出るまでの2週間に、覚悟はできていました。その2週間に、がんばらない自分もあっていいと、今までを振り返ることができたんです。

―― よくそこまで心の整理が。

 でも、検査で画像を見た日から、仕事になりませんでした。今まで心の中を占めていた些細な悩みや他人の評価が「がん」と言われることに比べたら、もうどうでもいいことだと吹っ切れました。そんななか、時間がくれば普通に食事もつくって、生活していたと思うんです。でも、あまり覚えていなくて。
年齢から考えると、いまは一生のうちの半分くらいのところかと思っていたんですけど、意外と短いものなのかな。と。生と死がリアルに迫ってきたんです。ああ、わたし生かされてるんだ。とそう思いました。今の時間を大事にしよう。いいきっかけだから、今 このときを楽しもう。
それまでは、努力するのは当たり前で自分に何かと目標を課していました。それって数年後に思いをはせて今 がおろそかになってるんですよね。

がんがわかる前からスピリチュアル系の本をずっと読んでいたんですね。いままで江原啓之さんの本とか読んできたのは、これに驚かないためだったのかと思いました。宗教を信仰するんじゃなくても、心の拠りどころがあるって強いんだなと思って。それまで本に書かれていることも、頭では理解していたんですけど、心からそう思えて。あらためて思いました。がんばらなくてもいいんだ、自分は自分そのものでいいんだと。

人が超えられないものを神様はお与えにならないとも聞きますし、だから告知をされたとき、神様からの休みなさいというプレゼントなのかとも思えたんです。
  プロフィール
亀田陽子さん
Kameda Yoko

家族構成/夫、長男、犬

1970年 岩手県生まれ

1992年
ヤマハピアノテクニカルアカデミー卒業

1992年
ヤマハミュージック東北仙台店に入社
ピアノの調律業務を担当

1998年 
(社)日本ピアノ調律師協会入会

2005年 
乳がんの診断を受け、退社
手術
腋窩リンパ節郭清、放射線治療30回

2006年
ピンクリボン スマイル ウォークに参加
スペイン巡礼の旅に出かける
フェルト教室をスタート

しこり1cmほどのステージ1の乳がんを手術。現在は、求めに応じてピアノの調律やフェルト教室で指導を行い、健康にも心をくばる、ゆったりと過ごす日々。
ホルモン療法(五年間の予定)で再発の予防に努めている。



いまも依頼があれば行う調律の仕事。絶対音感は必要なく、訓練の賜物。ピアノが出したい音を開放してあげるのがお役目。


小説「星の巡礼」を紹介してくれた友人からもらったロザリオ。普段着にも合わせ、ファッション感覚で身につける。


手術からちょうど1年後に参加した「ピンクリボン スマイル ウォーク」。家族と一緒に歩けたのが、うれしかった。
























 
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