やわらかく、大らかで、自然体。そんな空気をまとう後藤美香さんは、会話を通してその人の秘めた強みや可能性を引き出し、なりたい姿へとサポートをするプロフェッショナルコーチです。企業に勤め、責任のある業務を担当する一方で、コーチングを学んだ理由、起業への歩み、働く姿勢、今後のビジョンまでうかがいました。


コーチングとの意外な出会い
コンピュータからコーチングへ、まったく違う世界へと転身した後藤さん。しっかりとした目的意識があってのことかと思ったら、「それが、バーゲンでバッグを買って」と話は予想外の方向へ。そのバッグが『COACH』だったそう。初めて知ったブランド『コーチ』をネットで調べてみると、一つだけ異質な『コーチング』があった。
「 “人のやる気を育てる”とあった字が、光って見えたんです」
まだ日本でコーチングがあまり知られていなかった頃。とくに仕事で悩んでいるつもりはなかったけれど、最初にパッと浮かんだのは各セクションとの調整に役立つかも、という思いだった。
その頃まかされていたのは、コンピュータ西暦2000年問題に対応するプロジェクトチームのまとめ役。外資系金融機関の系列会社から集められたスタッフや取引先と連携を図り、システム対応することが求められていた。そんな中で、もしかしたら自分の言葉や態度が若い子を萎縮させているかも、という思いもあった。オペレーターやコールセンター業務が中心の女性社員の間で、ただ1人違う業務だったことも、なんとなく疎外感を感じていた。小さな悩みや気がかりなことの解消に役立つかも、とコーチングを学び始めた。


最大限の力を、対話でひきだす
 学ぶ前にイメージしていたコーチングは、問題解決の手法や、目標達成を早めるスキルを身につけるのかと思っていた。けれど、実際にはもっと奥が深かった。
1対1のパーソナルコーチングでいえば、コーチはクライアントと一緒に目標を設定し、現状を把握し、課題を洗い出し、目標に向かって最大限の力が発揮されるようサポートしていく。たいていは会話が中心だけれど、書くのが好きな人は書き出し、絵に落とし込むのが好きな人は絵を描くなど、そのクライアントに合った方法で行われる。いずれの場合も、コーチはキーワードを拾っていく。その拾い方がポイントになる。
「表情が晴れた瞬間、声のトーンが上がった瞬間、言葉に力がこもった瞬間などに発せられたキーワードを、しっかりと押さえるんです。言葉を交わさなくても、気づくことってあるでしょ。コーチングでは、いかに敏感に察知するか。感覚を研ぎ澄ますんです」
それによってクライアントがまったく意識していなかった良さに、気づくこともできる。


自分を好きだから、人を好きになれる
では、コーチに求められるのは、どういった能力なのだろう。

後藤さんが感じているのは、「“自分を好きであること”あるいは、“好きになろうとする努力を怠らないこと”」。というのも、自分のダメなところも含めて好きにならなければ、人のことも認めてあげられないから。クライアントをまるごと輝かせようと思ったら、本人が欠点だと感じている部分も、コーチの受けとめかたによって輝かせることができる。
そのためコーチングでは、瞬間的に感じる“直感”と、相手の本質を捉える“直観”のどちらも重視する。両方を踏まえて対話することにより、クライアント自身が、自分はどんな人間で、どういった人になりたいのか、自己理解を深めることができる。


スキルを輝かせるのは、人間観
一人ひとり気質も価値観も異なるクライアントを尊重し、受けとめ、さらにモチベーションを上げるには、もちろんコーチングスキルもある。けれど、それだけではない。

「スキルは1割に過ぎないんです。残りの9割は、自分の人間観とか、相手に対する心の姿勢とか、私自身のあり方。そこがしっかりしていないと、スキルを発揮できないんです」

そのために、自分の価値基準を知ることも欠かせない。どういう基準で人を見ているのか、自分の価値基準を知れば、かえって見方の選択肢が増えてくる。いま自分は相手をこの位置から見ているけれど、立場を変えたらどうだろう、と。人に、いい、悪いはない。コーチがどこまで気づくことができるかによって、クライアントの可能性は広がる。
「だから、つねにブラッシュアップが欠かせないんです」
  プロフィール
後藤美香さん Goto Mika

1959年生まれ。
家族構成/夫、義母

宮城県石巻女子高校を卒業
京都のコンピュータ専門学校に進む

1979年 
大阪の大手電機メーカーに就職
上記を皮切りにコンピュータ業界で18年のOL経験

1998年 
38歳で仙台の外資系金融会社に転職
2000年問題対応のため東京に単身赴任

1999年 
コーチングを知り、勉強をスタート

2001年 
41歳でフリーのコーチとして始動

2004年 
(有)アライブ・ワンを設立
コーチングスキルをベースに企業・NPO・福祉の現場での人材育成研修、コーチング養成講座、パーソナルコーチなどを展開





“癒し人”ハタタケルさん作の、あたたかなイラストと言葉。事務所やコニュニケーションルームに掲げて元気をもらう。


“会話はキャッチボール”をイメージさせるツール。ロールプレイングに使うタイマーは、コーチングの必須アイテム。













 
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