女性にも人気の社会保険労務士という資格。それが、どのような仕事なのか、具体的に知っている人は少ないのでは? 今回ご登場いただくのは、働きながら資格を取得し、独立開業した門田陽子さん。企業からは「先生」と呼ばれる立場でありながら、「社会保険労務士はサービス業」という言葉に、資格だけに頼らない真摯で誠実な姿勢がうかがえる。


ゴールを明確に、4年で資格取得
「フリーターの先駆けって言うんでしょうか。就職活動に疲れて、一歩も前に進めなくなってしまって」

東北大出身の学歴と行動力がありながら、どうして? と思ってしまうけれど、大学を卒業した門田さんは、就職をせず、台湾料理店でのバイト生活を選んだ。そこは時給だったけれど、その日の売上に応じて時給額が変わる、おもしろいシステム。バイトであっても、一人ひとりが経営者のように、いかに売上を上げられるかを考え、実践した。
“質の高い労働”と“お金”の平等交換。そういう意識が芽生えはじめたのも、この頃。社長に思いを伝え、労働者と経営者のよりよい関係を築くには……と考え、社労士の国家資格を取ろうと決意する。
その後、経営を学ぼうと生命保険会社に就職したけれど、体調を崩して退社。フリーター生活は続いた。平日は働き、土日は資格取得の予備校に通って勉強するハードな生活。収入は予備校につぎ込み、生活費はギリギリだった。その節約生活は、スーパーに計算機を持参するほど。
その時、懸賞金に惹かれて応募した省エネ術のレポートが省エネルギーセンター主催「わが家の省エネ実践コンクール」でみごと優秀賞を受賞。これが、いまの環境に関わる活動や役職にもつながっているのだから、なにが幸いするかわからない。
国家試験も、4回目の挑戦で合格。すでに行政書士の資格を取得していた夫の門田修さんと事務所を開業した。


お客さまとの対話が9割
いま事務所のメンバーは6名。門田さんの日々のスケジュールは、どういった動きなのだろう。
「平日の昼間は、9割がお客さまと会い、そのほかが、お役所と相談。手続き業務は2名の社会保険労務士を中心にまかせているので、夕方からは2人との打ち合わせ。夜9時、10時からが自分の時間です。仕事を預かった以上は、やり遂げたいので、遅くなることもしょっちゅう」

その仕事スタイルは営業そのものといった感じだけれど、「営業はまったくしてなくて、電話帳にも載せてないくらいなんです」とふわっとした笑顔。顧問先では、いかにムダな雑談ができるかを心がけているそう。そこから、課題の糸口を見つけていく。長く話すには、しっかりとした顧客のデータベースや、豊かなコミュニケーション力がなければ、できない。なんでもないおしゃべりは、短いスパンでみれば企業にとっても門田さんにとっても生産性が落ちるように思われるけれど、長い目で見ればだんぜんメリットが大きい。


先に、先に、スピーディな対応
 トラブルの芽をいち早く見つけて摘み、未然に防止することにより労使の関係を常に円滑に保つことが最大の目的。トラブルが起きたときだけ行くより、毎月、定期的に顧問先を訪ねるほうが、いち早く対応できるのはたしか。
お会いしてお話をすると、ぽろっと悩みごとが出たり、「そうそう、あのね…」とご報告を聞けたりします。そうすれば、こちらも早め早めの対応やご提案ができます。労使の信頼関係が強くなれば、もめることもありません」

早め、早めの対応に象徴されるのは、アポの取り方。門田さんのスケジュールは、1年先まで埋まっている。
「会う人は社長や労務管理の決定権者なので、急に予定を入れるのは難しいんです。年末にお互いのスケジュールを確かめ、お客さまごとに何曜日の何時と決めて1年間のスケジュールを組んでしまいます」

それにプラスして、イレギュラーな問題に対応する。たとえば、社員がケガをしたとか、トラブルが発生したとか。企業によっては、株主向けのニュースを含む社内報まで門田さんにまかせているところもある。その業務内容は、コンサルティング的なところまでおよぶ。


満足度の高さが、評価を上げる
いいコミュニケーションができれば、いい仕事ができる。とはいうものの、 “質の高い労働”と“お金”のバランスがとれなくなってしまうことはないのだろうか。
「ありがたいことに、お客さまのほうから顧問料を上げましょうと言ってくださることもあって。そのお気持ちがうれしくて」

情報や知識は、モノとして見えないサービス。インターネットで簡単に検索でき、どんどん低価格化している時代。お金を払ってでも情報や知識を得たいと思ってもらうには、「普段から、「いつでも相談できる」、という安心感と、「この人に頼んでよかった。うちの会社のためにここまでやってくれるんだ」という満足感を持っていただくのが、私たちの務め。社員とは違った立場で、でも会社に愛情を持って、厳しい意見や確かな情報を伝えることに対して価値を認めていただける仕事をしなければ、私たちがかかわる意味がないんです。」という門田さん。顧問先からの信頼が、さらなる自信につながっていく。
  プロフィール
門田陽子さん Kadota Yoko

1973年 静岡県生まれ。
家族構成/夫

1996年 
東北大学 法学部を卒業
バブル崩壊後の氷河期で、就職活動に疲弊。フリーターに

2000年 
社会保険労務士の国家試験に合格

2001年 
門田陽子社会保険労務士事務所を開業

司法書士と行政書士の資格をもつ夫とともに、企業を全面的にバックアップ。関連官庁などとの間にたち、手続き業務などを行う。その一方で、財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク(MELON)理事をはじめ、環境活動も積極的に展開




赤のインプレッサで、顧問先や講演先へ。購入して2年目で、約3万キロ。運転が大好きで、歌いながら走ることも。


つねに持ち歩く労基法の解釈総覧と、お気に入りの手帳。年1冊の手帳は、ペーパーを貼り付けていくので、少しずつ分厚く。


くるんくるんと伸びたグリーンが、事務所の窓辺にたくさん。鉢代わりのペットボトルに、省エネ術がチラリ。



















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