
社労士になって気づいたのは、経営者の悩みの深さだった。
「自分が働いていたころは、会社は強くて、無くなることなんてなくて、給与を払うのが当然と思っていたけど、実際には社長は事業展開のこと、お金のこと、人のこと…いろいろ悩みを抱えていました。社員には相談できないし、それを顔に出すこともなくて」
だから、社長とともに、どういう手当てをつければ社員が働く意欲を高め、“社員がイキイキ、社長も満足”という人事・給与体制をつくりあげられるかを考える。
企業と、人と、社会が、密接に絡みあっているから、ときには予期せぬことも起きる。それでも、門田さんは驚きを表に出さない。社長がどんなに動転していても、経営を揺るがすようなことがあっても、平然と微笑んでいる。
「大丈夫ですよ、社長。私たちが、できる限り守りますから」

心がけているのも「クールヘッド、ウォームハート」。つねに冷静な判断と、あたたかな心で対応する。顧問料をいただいていると、つい企業の立場にたってしまいがちだけれど、立場はあくまで中立。客観的に考える。
法律や制度の枠におさまらない、さまざまな状況がある。当然、決まりごとやキレイごとだけでおさまらないこともある。だから、社会保険労務士自身の人生観や気配りが必要になってくる。大切なことは、人材を“人財”にすること。そこが難しさであり、奥深さでもある。
「法律だけ押しつけてもダメなんです。どうしてその社員が、そういう行為に至ったのか。人を責めるのではなく、理由を見つける。社会の情勢が関係していることもありますし。自分も時給で働いていた身なので、労働者の気持ちもわかりますから。会社に厳しいことも言い、労働者に厳しいことも言います」
「いかに血の通った制度を取り入れていけるか、本当に難しい。でも本当は、答えは社長の中にあるんです。」
その言葉に、企業の社長といっしょに考え、悩んでいることが伝わってくる。それだけに、企業の発展が自分のことのようにうれしい。
「社長だけで始めた会社が、社員が増えたとか、事務所を引っ越してフロアを広げたとか。本当にうれしいですね」

企業の体制のこと、社会制度のこと、日本経済について、さまざまな視点から、うまく循環していないことを苦慮する落ち着いた口ぶりは、頼りたくなるほど安心感がある。さまざまな経験を積み、自信を深めてきたのだろう。ホップ、ステップ、ジャンプにたとえるなら、ステップの時期かもと勝手に想像して、いまの状況をうかがってみると……。
「たどりついた道であり、まだスタートラインにたったところ。朝も夜もなく、土・日に仕事をすることもあります。もっと本を読んだり、新聞をじっくり読んだり、研修に参加したりしたいんですが」
まだまだ軌道に乗せる助走段階といった感じ。もっともっとと、がんばっているのが伝わってくる。その門田さんがめざすところは。
「社会を構成するのも、企業を作るのも人。労務管理という側面から企業を支える、お客さまにとってなくてはならない人になりたい。人が活きれば企業は伸びるでしょう。1人を雇用するということは、会社はその家族を預かるということ。経済的に自立した家族を社会に1世帯でも増やすことが、地域経済を発展させていくことにもつながっていくと思うんです。だからこそ、会社も従業員も、“質の高い労働”と“賃金”の平等な価値の交換に対して誠実でなければならないし、私はこだわり続けたい。」

その思いをともに支えているのは、ご主人の存在。でもお互いの仕事についての専門知識はないので、「まったくわからず、ただただ尊敬。」なのだとか。
「お互いに口出しをすることはないけれど、どうしても朝まで仕事をしなければならないことや休日でもお客さまのところへ飛んでいくことも、同じ士業だから理解してもらえる。それがかえっていいのかも。」
大学を卒業して仙台に残ったのも、ご主人がいたことと、仙台でつくった人間関係があったから。
大学進学で仙台に引っ越してきた日、初めて降り積もる雪を見た。暦の上では春なのに、寒くて、寂しくて、そのまま静岡に帰ってしまいたいと1人で泣いたこともあったけど、少しずつ増えていった友人、知人。
まだまだ、もっともっとと思っていたら、いまは初対面の人と話しても、必ず共通の知人がいるほど知り合いの輪が広がっていた。まったくゼロから始めた仙台で、門田さんはしっかりと根づいている。
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