
フリーランスのアロマセラピストとして、自宅で行うアロマと食のレッスンのほかに、温泉旅館や整骨院のアロマコーディネートも行っている。季節や空間に合わせて、それぞれの利用客の気持ちを考えながら調合する。その活動を入れても、いまは無理なくマイペース。
「大きくしたいとか、利益を上げたいとかはなく、少しでもここを頼りにしてくれる人に来てもらいたいので」
これまで、いろいろな働き方を見てきた。仕事がお金中心にまわっているケースも多い。だからこそ、大澤さんは「お金じゃなく、気持ちをまわしたい」と考える。その一方で、理想ばかりで大丈夫かとも思う。
「この仕事で生活しているのだから、どこまでマイペースにしていられるか。本当に相手を思いやると、お金を考えたときに限界がある。癒しを求めてくる人の気持ちを、どこまで尊重していく姿勢でいられるか」
フリーランスの幸福と不安のはざまで悩む。そんな矛盾した気持ちを抱えながらも、生徒からレッスンしたことを生活に取り入れていると聞けば、「今までの生活レベルを下げても、喜んでもらえているのがうれしい」と迷いが薄らぐ。

生徒には、仕事をしている人、主婦の人とさまざま。だれもが忙しく働いている。そんな状況を、大澤さんもわかっている。
「仕事をしていても、結婚していても、世の中の多くの人が、自分のペースに合わせて仕事をすることなんてできない。いくら自分のペースに合わせることが大切と型通りに言ったところで、事実を伝えるだけ。やりたいけど、できない。それがストレスになってしまう。だから、勤めていたときの自分を忘れず、目線を合わせていたい」
それは、アロマセラピストの知識でも、野菜ソムリエの知識でもない。これまで仕事に本気で向き合い、全力で取り組み、のめりこむように働いた経験があるからわかること。
「ひと言でいえば、人間力。勉強じゃない、相手を思いやる気持ちなんです。たぶん、どんな仕事でも変わらないと思いますが、受け取り手の気持ちをどれだけ想像力を働かせて考えられるかなんです」

人との接し方、人生における仕事の位置づけ、大澤さんの考え方には一本すっきり芯が通っている。けれど、起業セミナーも自己啓発セミナーも受けたことはない。ビジネスパートナーもいない。そのかわり、とても力になる友人たちがいる。
「友人と話すのが自己啓発。セミナーに行かなくても、友人と話していると考えがひらけてくるんです。アドバイスをくれたり、指摘してくれたり。適当に仲のいい人というのはいなくて、みんな家族みたいな関係」
学生のときからの友人もいれば、仕事をはじめてからの友人もいる。努力してきたこともわかってくれているから、的を得たアドバイスをくれる。そんな友人の口コミから仕事が広がっている。それは、どんなに忙しくても、友人との時間を大切にしてきたからでもある。
「メール、電話、会う、そのなかで一番多いのは会うこと。1時間しかなくても、会ってお茶する。仕事をした分だけ、友人と会うんです。その時間をつくるのは大変だけど、体の疲れより、心の疲れのほうが重症だから。心の疲れがとれると、肌もツルツルになるくらい」
生活も人との付き合いも、大切なのは日々の積み重ねなのだ。

友人たちとの関係も、いま住んでいる環境も、十分に満足している。
「仙台はすごくいいですよ。特に、東北がいい。山形にハーブ園があったり、福島には農家の方が営む喫茶店があったり。首都圏から見てステキと思えるようなところが、東北にはいっぱいありますから。ネットもあるから、ほしいものは何でも手に入るし」
環境は満足。あとは、自分の気持ち次第。年齢にしばられず、おしゃれに余念がなく、仕事も遊びもしっかりしたいという大澤さん。では、今後のイメージしているシーンは……?
「山の木蔭に、それほど大きくない建物があって、そこでお茶して、アロマして、マッサージもできて。教えてみたいと思う人が、そこで教えたりできて。近くには大きな木があって、自分とパートナーがいて、おにぎり食べたり、おしゃれをしたりして、心おだやかにいたい」
働くというより、快適な日々のなかの一部分。大澤さんが考えているのは、そんなゆるやかさだ。
|