
お店を持ってうれしいのは、やりたいことができる気楽さ。以前といちばん変わったのが、花の仕入れ方になる。
「勤めているときは、何が売れるか考えながら仕入れていたけれど、今は売れなくてもいいから、好きな花を少しずつ買っています。お店をオープンしたての頃、来店されたおじさまにバラに合わせるかすみ草がない花屋なんて、と言われたこともあったけど、それも最初のうちだけ」
それが逆に「変わった花がいっぱいある」とクチコミで広がっていくことになった。ブライダルの契約がとれたのも、ちょっと違うことをしてくれそうという期待感があってのこと。小さなお店に、多いときは60種も並ぶことがあるけれど、いいなと思う花と出合えなかったときは品種が少なくなる。そこが舛田さんのこだわり。
お客さまも、ちょっと違う花を求める人が多く、慣れてくると「好きな花ばかりだから」と電話だけでオーダーする人も多い。

気楽さがある代わりに、それまで感じたことのなかった心もとなさを感じることもある。
「今日、はたして何人お客さまが来てくれるかなとか、何件注文が入ってくるかなとか。こんなに準備しているのに、前の道を通る人さえいない日があったりして」
誰からも忘れ去られたかに思える時間も、ひとりで乗り越えなければならない。それと、もうひとつ。以前なら、アレンジしたものに対して恩師やスタッフが「いい」とか「ここが」とか言ってくれる人がいた。けれどいまは、いい、悪いを、自分で判断しなければならない。
「自分でいいと思っていても、お客さまに満足していただかないとダメ。答えはひとつじゃないですよね。答えのない仕事だから、お世辞で素敵と言ってくれているのか、本当に気に入ってくれているのか心配で」
考えても、考えても、はっきりした答えは出てこない。

あれこれ浮かんでくる心配をはらってくれるのが、友人たち。ちょうどお店を立ち上げたとき、高校の同窓会があって、離れていた友達ともまたつながった。「知り合いが結婚するからブーケを」とか、卒業式シーズンにPTAの友達が花束を頼んでくれる。契約先のスタッフも「お店のカードを置いていいですよ」とか、「また紹介しておいたから」と言ってくれる人がいる。
「こんなに、たくさんの人に囲まれていたんだとありがたくて」
営業ができない性格の舛田さんに代わって、いろいろと紹介してくれる人たち。手が足りないときは、花屋仲間が助けてくれる。お店をはじめてから知り合いになった同業者とも、お互いに協力しあう仲。そんな仙台は、居心地がいい。
「共通の知り合いがいて、世間は狭いなと。それがかえって、仕事上で助けられていて。本当にみなさんに助けてもらって3年目。どうやってお返ししたらいいのかと思って」

その方法のひとつが、きちんと真面目に仕事をすること。
「せっかく紹介してもらっているのだから、ガッカリされないように。またアンプリュスの花がいいと言っていただけるように。古いお花から売りたいとチラリと思うことがあっても、その気持ちは押しとどめて。古いのはおまけしてあげたり、自分の部屋やお店に飾ったり」
そんな舛田さんがめざすのは、愛されるお店、入るたびにワクワクするお店。
「この花達を自分ひとりで見ているだけではもったいないので、買わなくていいから、見にきていただきたい」
ビジネスというより、花が好きな人の感覚。だからこそ感じるツラサもある。
「商品にならなくなった花は処分しなければならないこともあるので、それはずっと葛藤です」
プロであると同時に、どんなに経験を積んでも素の感覚を失わない舛田さん。今後は花の心得のある人もない人も一緒にいけて、「こういういけ方もあったねと、楽しい時間がもてれば」と新しい方向性も見えはじめた。いくつまでに何をしてと未来計画を立てることはないけれど、好きなことをしながら自分のスタイルをつくりあげていく姿勢は、これからも変わらない。
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