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入社5年目といえば、どのような立場にあるだろう。中堅クラスの仲間入りをした人がいるかもしれない。まだ新人の先輩格という人もいるかもしれない。今回ご登場いただく岩澤仁子さんは、中堅を経験することなく部長になった。年齢より落ち着いて見えるのは、肩書きのせいばかりではなく、密度の濃い経験がこの数年間に凝縮しているからでもある。

開学2年目の県立宮城大学に入学した岩澤さん。学内にはベンチャーサークル“デュナミス”があり、その起業家的な活動はすでに地元紙にも紹介されているほどだった。
「新入生に何をしたいかと聞けば、“デュナミス”に入りたいという人が多くて、サークルの人数は100人を超えていました」
岩澤さんも、入学した春から活動に参加した。新入生へのパソコン購入のアドバイスやアフターフォロー。小中学生や地域の人にホームページの作り方を教えるなど、活動はパソコンのレクチャーが中心だった。
それが大きく変わってくるのは、岩澤さんが3年のとき。デュナミスは合資会社になった。新たにコンサルティング部門ができ、岩澤さんは自ら希望してそのプロジェクトに加わる。インターンとして2年、まちづくりや企業のコンサルティングに関わった。
その手法として用いたのが“図解”だった。それは、ベストセラー『図で考える人は仕事ができる』(日本経済新聞社)の著者である宮城大学事業構想学部の久恒啓一教授が研究・開発したもの。岩澤さんたちは、久恒先生の愛弟子にあたる。

大学3年の夏から4年の6月までプロジェクトにのめりこんだ。
クライアントの課題を、アンケートやヒアリング、インタビューなどで要因をみつけ、アクションを起こしやすいよう解決策を図解で提案した。徹夜でグラフを作ったり、分析したりの日々。そのころ、ちょうど就職活動が重なった。
「会社説明会にエントリーしていても、その時に先方とのミーティングがあれば、ミーティングを優先していて。将来の不安もあったけど、もう少しやりたいと思って」
デュナミスへの入社を考えていたわけではなかったけれど、そんな岩澤さんを、周りの友達は間違いなくデュナミスに入るものだと思った。
「就職活動もせずに入るの、ラクだよね」
そんな言葉への悔しさもあった。大手企業に勤める家族も、ベンチャー企業であることを心配した。自分でも普通に就職活動をして、会社に入ったほうがいいのかと思い悩んだ。
「でも、図解を使って何かができるのは、この会社だけ。それが、決め手になりました」
学生ベンチャーだから、新しい小さな会社だから、年齢にもキャリアにも関係なく、お客さまとのミーティングに出させてもらえ、ダイレクトに意見交換ができる。自分のやりたいことが、はっきりした。

入社してからも、仕事はリサーチとコンサルティング業務。売上が減っている企業なら、課題解決のためにお客さまの声を聞くアンケートをとる。その質問項目の設計と分析を行い、それにもとづく販促計画を提案する。社内の連携がスムーズにいっていない企業なら、社員と顧客の両面からヒアリングして、課題を見つけだす。
「社員から出た課題と、お客さまから出た課題、そこに重なりがあって」
取り組んでいるうちにわかったことから、ぴたりとニーズを見つけだす。どれだけ的確な解決策を提案できるかどうか、自ら考え、提案していく。
こちらの質問に、ひと言ひと言考えながら話す岩澤さん。その言葉や態度からは、きちんとやり遂げる責任感の強さと誠実さが感じられる。たぶん、入社したときから育ててもらう意識より、自分で育つ意識があったのだろう。それが、さらに岩澤さんを自立させたのかもしれない。

仕事のスタンスも、一般のコンサルティング会社とは、かなり異なる。
「課題が解決すれば、私たちコンサルタントは介入する必要はないんです。自分たちで課題を見つけ、解決策を考えられるようになるのがいちばんですから。そういうスタンスでいられるのは、この会社だけなんです」
利潤が第一優先ではないとの思いは、入社1年目の経験から、さらに強まった。まちづくりの住民ワークショップに、企業のサポート的な立場で関わった岩澤さんたち。まちづくりコンセプトをひと言で言い表せるよう、住民と数回かけて話し合い、考えに考えてまとめあげた。けれど、最後の最後で元請の企業から、分厚い報告書が提出された。それも、テンプレートの名前を書き換えただけのような、住民の声のかけらも入ってないようなもの。
「その報告書を見せた瞬間の、住民のがっかりした顔が忘れられないんです。自分たちも、それを見たくてやっているわけじゃなかった」
人に喜ばれる達成感も、つらく苦い思いも、経験したのは入社して数年、20代前半のことだった。
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