
若さと勢いで、仕事に携わっていた入社3年目の頃。会社が合資会社から株式会社に変わるのにともなって、岩澤さんは4つある事業部のうちのひとつ、リサーチ&コンサルティング事業部の部長に昇進した。
それまでは一社員としてプロジェクトに関わり、情報を分析すればよかった。けれど、事業部長っていったい何をすればいいんだろう……。プレッシャーを感じてしまった。
「売上をあげなきゃとアクセク営業してまわったけど、一生懸命に企画しなきゃと思ったけど、売上のためにというのも自分に合わないし。追い求めたいものと、自分のギャップが大きくなって。アセリ過ぎてました」
がんばればがんばるほど、こんなはずじゃないという思いが強くなる。気持ちが空回りする。お客さま自身が課題を解決できれば自分たちは不要、そう思っていたスタンスまでもが揺らいだ。
「自分でカタク考えすぎてしまって。社長からもっと自由にやっていいと言われても、会社なので譲れない部分もあるだろうしと思ったりして」
本来ならうれしいはずの昇進が、戸惑いや葛藤を大きくした。

そうした中、社内のマネジメント業務として新たに人事労務管理が加わった。会社法のこと、労働基準法のこと、まったく知らないことばかり。
「なぜ、私が?とも思いましたが、私の仕事は企業とお客さまのコミュニケーションを見直すこと。労務管理も社内コミュニケーションを見直し円滑にする、ひとつかなと。この経験は、同じようなことで悩んでいる会社ともわかりあえるようになるだろうし」
考えをガラリと転換した。今は法律など、むさぼるように吸収している段階。専門家に教えてもらいながら、ふと気づいたことがある。
「他の会社の人は、みんな会社法とか労働基準法とか知っているのかな、と。みんながわかっていないといけないのが法律なのに、わかりにくいのは、箇条書きが問題なのではと思って。法律がどう変わったのか。それがどう影響するのか。自分にたぐりよせて理解できるように、もっと図解でわかりやすくしたいな、と。大枠や構造的なことがわかれば、もっと円滑に仕事が流れるように思うので」
まったく未知の分野だから、図解が生かせるのではと考えが浮かんだ。この仕事は突き詰めるとおもしろいかも。そう思えるようになってきた。

岩澤さんが仕事をする上で大切にしているのは、“楽しく仕事すること”と“みんなで共通認識をもつこと”。けれど、みんなが同じ視点にたつことの難しさも、これまでの経験から十分にわかっている。
「“望遠鏡”と“虫めがね”の視点を持つようにしているんです。全体像が見える望遠鏡と、足元が見える虫めがね。コンサルティングをしているときもそうですけど、現場のことをわからずに意見を言えば、『そう上からものを言われても』と言われるし。現場からみた意見を経営側に伝えれば、『そんな細かいことじゃなくて』と言われるし。それをつなぐ人になりたいと思って」
コンサルティングの仕事は、これが正しいのだから、こうすべきと押しつけられるものではない。岩澤さんがめざすのは、社内にとっても、社外にとっても、頼れる存在。
「困ったときはあの人に相談するといいよとこっそり言われているような、『ゴルゴ13』みたいな人が目標なんです」
超人的な肉体と、頭脳と、精神力を備えた人。そんな存在になるため、自ら成長をめざしている。

業務の忙しさはあるけれど、趣味も手を抜かないのが岩澤さん。仕事で先端の図解を行なうのとは逆に、趣味は伝統にもとづく和の世界。郷土芸能の“すずめ踊り”(※注1)でお囃子の太鼓をたたいている。
そこでも、練習日程を調整し、場所を手配するのが岩澤さんの担当。週1〜2回、3時間程度、市民センターに集まるメンバーは20代から40代後半まで。仕事もいろいろ、会社員や店主、看護師もいる。
「部活みたいな感じです。社会人2年目くらいのとき、大学時代の友人に、お祭りの当日に手伝ってと誘われて、行ってみたらカッコよくて鳥肌が立って」
会社のことで頭がいっぱいになったら、太鼓をたたいてすっきり。エネルギーのバランスをとる。ビジネスだけにとらわれない、上手な力の抜き方も、岩澤さんの可能性をさらに広げている。
※注1 すずめ踊り
仙台築城の際にはじまるとされる郷土芸能。伊達家の家紋が《竹に雀》であったことと、はね踊る姿が雀に似ていたことから「すずめ踊り」と命名。5月『仙台青葉祭り』や7月『夏祭り すずめ踊り』で披露される。
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