
その人らしい雰囲気をかもしだす、どこから見ても美しいデザイン。無から有を生みだすデザイン段階が、いちばん苦しくもあり、やりがいもあるところ。そこで立ちはだかるのが、予算の壁になる。この石をダイヤモンド2粒でとめれば、もっと引き立つのに。そう思っても、予算をこえてしまうか、もしくは自分の仕事が成り立たなくなるか、どちらかしかない。迷ったときは、お客さまに相談するのがいちばん。
「案外サクッと返事をいただけるんです。それならアップしますとか、今回はこのままでとか」
そうして、また一歩、工程が前に進む。いくつもの工程を経てジュエリーが完成したら、記念写真を撮って、その中の1枚をプリントアウトして同封する。やりとりのなかで感じたその人の趣味にあうような情報を手紙に書き添えることも。
「お店で買うのと違って、センスの似たものを好きになってくださるお客さまが多いので、感覚が近いんです。わたしがみた写真展で、その方も好きなのでは、と思ったものなども紹介しています」
感謝の気持ちを、少しでも形であらわしたいと思う。箱にかけるリボンの形にもこだわるくらい気持ちがこもる。自分の手を離れても、お客さまのところでかわいがってもらえるように。その小さな手間と心づかいが、お客さまにも伝わる。

自分が美しいと思うジュエリーをつくり、喜んでいただきたい。その思いだけでは、なにか足りないのでは。そう思って、1日だけ女性起業塾に参加したこともある。
「両親は公務員で、誠実に真面目にやることの大切さを教えてくれました。その影響もあってか、わたし自身、お金に直結する部分の意識はどこか弱いんです。でも、起業塾に集まるのは、熱い心をもっていることに恥じらいを感じない、志の高い人たち。そんな人達と経営者の考え方を学ぶこともわたしにとっていい勉強かもしれません」
参加者の中には起業したいけれど、まだ何をしたいかも決まっていない人たちもいた。その行動力を、すごいなと思った。かぎられた時間だったけれど、自分の強みや弱みを見つけることもできた。
「30年職人している方に技術の面ではかなわないし、生まれもった芸術家体質でもありません。普通にOLしたり、仕事をして、もしかしたら、こんな才能があるかもとはじめた、ふつうの人の感覚に近いジュエリーデザイナー。それは自分の色として出していきたいと思っています」
はじめる前は心配でも、踏み出してはじめてわかることがある。
「踏み出した者だけに与えられるチャンスがあるんです」

好きなことを本業にし、自分のペースで時間調整でき、充実した気持ちで作品づくりをする。上品で美しく、ファッションセンスもよい女性。表舞台のけやきさんは、ただただ才能と美貌に恵まれた素敵な存在に映るに違いない。その陰で、けやきさんが夜通し働いているなんて、あまり想像できないだろう。
「徹夜のことを自称“夜勤”と言っていますが、(実は昨日も・・・。)家ではメイクもしないで、スウェットを着て、作業で爪が真っ黒になったりもします。Blogでは、いつもうまくいっているように見えていても、本当はしょぼんとしているときもあって。そんなときに友人や会ったことはないけど読んでくれる人たちからのコメントに元気づけられます」

みんなに支えられて、けやきさんはいる。周囲の励ましと、自分の心の芯が、さらに夢を大きく育てていく。
「まだ妄想上の案なんですけど、仙台と関わりのある仕事をしてみたいと思っているんです。光のページェントの募金活動で、ボランティアにちかい感じでお手伝いできないかなと思って。たとえば、50円募金するのなら、ケヤキの木をモチーフにしたチャームをプレゼントして500円募金とか。募金が集まりやすくなるような、ムーブメントを起こせないかな、と。よく“多くの人を幸せにすることができたとき、自分も幸せになれる”と言うでしょう、だから」
けやきさんにとって、いまの働き方は仕事というより、もっと自分の中に占める割合が大きくなってきた。では、けやきさんにとって仕事とは、どんな存在なのだろう。
「自分が生きている証。私という人間そのものです」
まっすぐな瞳で、澄んだ声で、答えがかえってきた。 |